耶馬英彦

四月になれば彼女はの耶馬英彦のレビュー・感想・評価

四月になれば彼女は(2024年製作の映画)
4.0
 とてもよかった。精神科医の主人公と、婚約者と、元カノの3人の人間模様が主体なのだが、時間を前後させつつ、徐々に関係性が明らかになっていく。状況が緊迫している訳ではないが、主人公の喪失感と焦燥感が伝わってきて、ストーリーに引き込まれていく。

 社会の息苦しさに、登場人物の誰もが少しずつ病んでいるが、人間はそれが常態だという可能性もある。心身ともに健康な人がいたら、多分ちょっと気持ち悪いだろう。微妙に病んでいる者同士が、少しだけ重なる共通点を見つけながら、理解し合える部分を共有していく。それが現代の恋愛の本質なのかもしれない。

 写真で何を撮りたいか。森七菜のハルは「雨の匂い、街の熱気、人の気持ちとか」と言う。「目に見えないものばかりだね」と佐藤健のフジが笑う。心に残るシーンだった。
耶馬英彦

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