レインウォッチャー

仮面ライダー555(ファイズ) 20th パラダイス・リゲインドのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

3.5
劇中で、俺たちの草加雅人がこんな風なことを口にする。

「人は変わるときもある、だが変わらない者もいる」。

まあこのときの奴の真意は置いといて、これほどこの《再会映画》に相応しい言葉もないんじゃあないだろうか。事実、この言葉は映画全体で語られるテーマとも重なって、夜の向こうへ余韻を届ける。

20年。
赤ん坊が青山のスーツを、働き盛りが赤いチャンチャンコを着だす年月。わたしは正体が不老不死のミジンコオルフェノクだからあんまりわからないんだけれど、有限の時間を生きるヒトにとってこれはやはり大変なことである。

20年ぶりに集まった『555』の面々もまた、「わ~、あの時のまんま!」とはいかない。
やはり相応の変化があり、巧(半田健人)にしろ草加(村上幸平)にしろ海堂(唐橋充)にしろ、みんなちょっとずつ外見だけでなく声や表情のチューニングが変わっている。ストーリーの面でも、特に真理(芳賀優里亜)には大きな・後戻りできない変化が起こったりもする。

しかしそれでも彼らは、昔の懐古モノマネなんかじゃあなく、今の彼らでしかできない『555』を真摯に語り、前に進む姿を見せる。
「変わってしまった」ものは「今からでも変われる」に変換され、その中で選び取る「変わらないもの」を強調する。乾巧が「俺はこれでいく」と取り出したるアレ、そしてかかるアノ曲、変わっていくわたしたちもまだ『555』を好きでいて良いんだ、という気持ちにさせてくれる。良い時間だったと思う。

タイトル『パラダイス・リゲインド』は、20年前の劇場版『パラダイス・ロスト』との対応を思わせる。『ロスト(失った)』に対して『リゲインド(取り戻す)』というわけだけれど、単なる言葉遊びだけではなく内容にも対になるポイントは多い。

パラレルワールド設定だった『~ロスト』に対して今作はTVシリーズから繋がる後日談的位置づけだけれど、姿を消した巧を待つ真理、という構図は同じ。
また、『~ロスト』ではオルフェノクが人間を狩っていたが、今作は逆にオルフェノクがマイノリティ側となっていて、真理たちはオルフェノクの保護活動を裏で続けているのだ。

真理たちの行動は今は亡き木場(泉政行)の信念に通ずるものであり、ここでもまた「変わるもの」「変わらないもの」両方を受け入れる大人の強さが感じられる。対する今作のヴィランは、いわば変わる可能性を拒否するような存在であり、ここでも精神性の対比が描かれ、何を《悪》とするかをブレさせていない。
20年前ではきっと語り得なかった、より理想の先へと踏み込むような物語は、巧と真理の新たな関係性にも説得力を与えていると思う。それでいてゴールを派手にし過ぎていないのもやっぱり『555』らしくて安心した。

キャラクターの感情や思想の推移が少々急に感じるところも散見されたけれど、尺(65分)を考えれば致し方なしか。ディレクターズカット版が観たい、ていうか続編できる気満々なラストだったので毎年やればいいと思いますやってくださいお願いします、おーぷんまいあいずふぉーざねくすとふぁいず(again.)

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その他雑感メモ。

・新ライダー・ミューズ役福原ルミカさんがとても素敵である。なんていうか、たいそうアニメ/漫画顔美女なのだ。伊藤潤二の漫画から飛び出してきたみたい。特撮/ホラー映え間違いないので、今後の活躍を期待したい。

・俺の推しキャラ、センチピードオルフェノクこと琢磨くんはどこ!?!?そろそろ現場主任くらいに出世してるだろうか。

・おや?20年経つと草加の毒も薄まるのか…?とか暫く油断してたら、まさかの顔芸祭りが控えていたでござる。