Jun潤

裸足になってのJun潤のレビュー・感想・評価

裸足になって(2022年製作の映画)
3.7
2023.07.23

予告を見て気になった作品。
凄惨な犯罪に巻き込まれ、声も夢も失った女性の再生ストーリー。

北アフリカのイスラム国家、アルジェリア。
内戦の傷が癒えていないこの国に暮らすフーリアは、ダンサーの夢を叶えるために日々練習を重ねながら、夜は母に車をプレゼントするために賭け事に夢中になっていた。
ある日フーリアは、賭けの結果に文句を言いにきた男に階段から突き落とされ、足首は折れ、心的外傷から声を失ってしまった。
絶望に暮れるフーリアがリハビリで出会ったのは、テロによって大切な人を喪うなどして声が出せなくなった、生まれつきの障害のためにテロリストの捕虜になった過去を持つ女性たちだった。
ふとしたきっかけから彼女たちとの交流が始まり、ダンスの腕を見込まれて、フーリアは女性たちにダンスを教えていく中で徐々に前を向いていく。

なるほど、、。
今作に対して個人的に感じたのは、深い観応えや高い完成度というよりも、観る人によって捉え方も理解度も自由に決められる、不思議な浮遊感でした。

描写として印象に残ったのは足ですかね。
バレエを踊るフーリアが履くトーシューズに始まり、裸足、そしてカジュアルな靴へと、女性たちを時に縛り、時に自由にし、時に未来への希望となる。
そんなことを象徴する描写として、印象に残させる足の描き方だったと思います。

フーリアを中心としたドラマは、ダンスと手話が反発し融合して生まれるボディランゲージ全体を主軸としていたように感じました。
ダンスに対するこだわり、過去のトラウマから行動に顕著に現れる不安、そしてそのどちらもがあったからこそ繋がるラストダンスと、作品全体で踊っていたように思います。
衣装やジャンルなどの見た目、評価されて世間に出ることだけでなく、自分の周囲の人や大切な人に対して言葉を使わずに感情を伝える手段としてのダンスが描かれていました。

テロのことも含んでいるのかもしれませんが、原題の通り『自由』を描いた作品だったのかなと思います。
自由であることの楽しさと伴う痛み、束縛される苦労と得られた喜び。
国の外に出て悲劇に遭ったソニアや、ろう者のためのダンススクールという鳥籠に入ったとしても、自由であることを表現したフーリア。
自由すぎるが故に数々の事件や悲劇を生み、フーリアのトラウマを刺激する存在として、あの警察の描かれ方だと思うと面白いですね。
Jun潤

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