Jun潤

ローマの休日 4K レストア版のJun潤のレビュー・感想・評価

5.0
2023.08.31

往年の名作が、製作70周年を記念して4Kレストア版にてリバイバル上映。
名前は聞いたことあるし真実の口の場面も見たことはあるけれど、実際に劇場で観るのは初めて。
日本公開は1954年と、親すらまだ生まれてないような時代の映画を今観れるというのは素晴らしいことですね。

イタリアを訪問中のアン王女。
公務が途切れない日々に嫌気がさし、ローマの街へと一人繰り出す。
酔い潰れて路上で寝ているアンに声をかけたのは、アメリカンニュース社で記者として働くブラドリーだった。
初めはただの行き倒れた女性かと思っていたが、アンの正体を知ると、特ダネのために彼女と行動を共にする。
やがて目覚める恋の気持ち。
しかし二人の境遇の違いは彼女たちを引き裂いていく。

なるほどなぁ〜!
こういう作品だったのですね。
映画の観せ方が多様化し、技術が進歩し、時代が変わってもなお、恋愛映画としてだけでなく、映画史が続いていく中での本流として、ベースとして君臨し続ける一つの映画でした。

今作にはなんといっても歴史がつまっていましたね。
まずは公開から70年経っても色褪せない、むしろ今でも通用するほどの厚みを放つ一つの作品としての歴史。
そして1953年というインフラもインターネットもまだまだ普及していない時代、20世紀後半に入って変化していく時代が描かれているために放たれる、作中に閉じ込められた歴史。
最後にBGMや効果音、撮影技法や演出など、今ほど何でもできるわけではない時代に、撮影地やフィルムカメラ、そして当時のキャスト陣で作れる最大限が込められている映画の歴史。
今観てもこうして歴史を感じられるのは、今作を製作した当時のキャスト・スタッフたちと、今作を語り継いできた映画に携わる全ての人の営みの成果ですかね。

話的には身分違いの恋、それも一日だけの恋、ローマを舞台に繰り広げられる冒険的な恋と、ロマンスが有り余るほどに詰め込まれた純粋すぎるほどのラブストーリー。
しかも第一印象はお互い最悪だったのに、別れ際の切なさ、『休日』の次の日には全く別世界の人間同士として出会わなくてはならない悲痛さも感じ取られる、作品としての深みも十分に仕込まれている間違いなく名作の一本。

当時の作品はあれですね、エンドロールが無くて、スッキリしていてこれはこれで良いですね。
Jun潤

Jun潤