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砂漠の星のひばのレビュー・感想・評価

砂漠の星(2022年製作の映画)
4.0
サッカーができるのは今日まで。引っ越す子供のボールと共にチームメイトもいなくなる。環境問題と言われると自分の高さの目線の情景が思い浮かぶだろうが、常に子供の顔と乾いた足元を映す。わたしたちはこんな音が出る地面を歩いたことがあるだろうか。遠巻きに聞こえる搾取への抵抗と諦観。筆跡だけを残し去る友達。人生を形作る無形のつながりがこの地で試されている。私たちは"テーマ"ではないと訴えるような子供たちの振る舞い。「あの子に告白した?最後に競走しよう」チリ北部は慢性的水不足(民営)と採掘により人々を土地から引き離している

メモ
教育番組・コンテンツの国際コンクールこと第50回日本賞(審査は9月)
一般向け部門 最優秀賞:トゥー・キッズ・ア・デイ
青少年向け部門 優秀賞:砂漠の星
幼児向け部門 最優秀賞:スメッドさん一家とスムーさん一家
児童向け部門 最優秀賞:小石の丘

環境問題、戦争、分断、難民、貧困、偏見と差別などが取り上げられている。『トゥー・キッズ・ア・デイ』は2人に1人の割合で逮捕されているヨルダン川西岸部で投石の罪で逮捕される子供たちの話でイスラエル人とパレスチナ人による共同製作だ。子供を軍事裁判で裁くか銃で撃ち殺す側のイスラエル元顧問の「暴力因子を逮捕してるんだから褒められていいはずだが?」の態度に絶望した。そこに住むパレスチナ人は壁に囲まれているため移動はできずイスラエル人といえば軍人や入植者しか見たことがない。別ドキュメンタリーだがそこで暮らすパレスチナ人の水道はイスラエルが管理しており彼らのタンクを撃って暇を潰すようだ。だから断水が絶えないんだと。訓練したくなったらその辺の住民を殺す。『スメッドさん一家とスムーさん一家』は宇宙を一周しないとわかりあえない隣人という題材は中々に重いなと感じたし、『小石の丘』は小石の丘までたどり着かないという現実ラインの物語でわりと衝撃的だった。教育の題目で届けるべきものとは何なのか、世界に絶望せず共に生き抜く方法を同じ子供の視線で、しかしながら子供の主権を曖昧にすることでより険しい表情で語りかける。教育の役割は子供が自ら考え行動するよう導くことでありその制度を決める大人の有り様と姿勢が何よりも問われる
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