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ほつれるのdramaticgasのレビュー・感想・評価

ほつれる(2023年製作の映画)
5.0
自己愛に縛られ、被害者ポジションに居続けることで互いのマウントを取ろうとする(どうしようもなくくだらない、でもだからこそ堪らなく人間らしい)夫婦を高すぎる解像度で描くムービー。

互いに加害者であり共犯関係なので、自分を守る為に被害者マウントを取る必要がない。だから不倫のときは優しくなれたのだろう。明らかに感情を現すべき場面でも声を荒げることすらしない二人のコミュニケーションは、互いのことを思っているからのものではなく、感情的になることで加害者ポジションになってしまうことを自らの自意識が耐えられないだけなのだ、多分。

文則(田村健太郎)の理詰めではあるけれど(だからこそ)子供っぽいコミュニケーションが”嫌”なのは誰しもが共感するところではあるけれど、誰とどこに旅にでようとも心ここにあらずで自分のことを考えているだけ(思えば最初の不倫相手とのグランピングでさえそうであった)の綿子(門脇麦)も大概だと思った。

恋人(より性格には不倫)関係だった頃のデートをやり直すことで関係をやり直そうとするなんてことは、確かに浅はかだし、綿子は意図的にそうしているのだと思うけど、あのリアクションはいくらなんでもオーバーキルが過ぎると思った。