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レッド・ロケットのdramaticgasのレビュー・感想・評価

レッド・ロケット(2021年製作の映画)
5.0
空っぽな入れ物にpenisを付けただけな男の醜く美しいムービー。

中身の無さを誤魔化してルックスとpenisのみで何とかサバイブしてきた元ポルノ俳優マイキーは、経年劣化しマジックピルに頼らざるえなくなっても(他に何もないのだから)その武器で勝負し続けるしかない(と本人は思い込んでいる)。だから自分の武器がまだ通用しそうなテキサスの田舎で、ティーンエイジャー相手にマイキーがイキり散らかすのは当然のことで、それが上手くいった(あくまでマイキーの主観でしかないが)ならハリウッドで復活だ!と夢想するのも至極当然のことなのかもしれない。

そんな自分の身の丈に合わない偉大な何者かであろうとして自分と周りを不幸にし続ける男たち(マイキーは勿論、詐称までして軍歴を得ようとしていたロニーも、そしてトランプのMake America Great Againに心酔したハリボテの男性性信奉者たちも)と比べ、レクシーたち女性は現実的で打算的ですらある。だからストロベリーもマイキーと本気で駆け落ちしようとは思っておらず、彼を使って優越感を得たり、彼との日々を人生を振り返った時のスパイス程度にできれば、それで満足なのだろう、多分。

十八番としてトップレスでインシンクとか歌っちゃうJKに本気で恋に落ちてしまうオッサンという関係性は全然アウトなんだけど、マイキーの精神年齢的には普通にあり(寧ろストロベリーのが大人)、というのが一番ヤバい。マイキーいくら何でもクズすぎ(本音を言ってくれたレクシーへのリアクションとか、あの「神様ありがとう!」とかも含め)、そしてテキサスの(工場やそこから出る煙といった本来はきれいなはずのない)風景美しすぎ。