YukiSano

哀れなるものたちのYukiSanoのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.3
フランケンシュタインが女性だったら篇

フランケンを女性に置き換えて、さらにその女性原作者の生き様を投影したフェミニズム映画。

のように見えるけどランティモスが今まで描いてきた、野蛮で無垢なるものから独立した人間になるという題材を悪趣味スチームパンクSF映画として表現した底意地の悪いフェミニズム茶化し映画にも見える。

人間は中身ドロドロなので内蔵をさらけ出して生きろという強烈なメッセージ。それが、できないなら動物にまで落とされ家畜とされる。家畜扱いされてきた女性が家畜を飼うという強烈な皮肉を見せ、女性の独立を高らかに謳うフェミニズム映画の皮を被ったブラックユーモアがオリジナリティを感じさせる。

とにかく女性を閉じ込めたがる男性が出てくるランティモス映画なのだが、父性、性欲、愛、など様々な理由でがんじがらめにしてくる様がランティモス映画の集大成のようだった。特に「籠の中の乙女」のSF映画バージョンとして見ると面白い。

社会的女性解放というよりも、生物としての雌が自覚的に進化を遂げる過程を、この上なく斬新な見せ方をしている。

まさに「バービー」以降の作品としても完璧に時代のど真ん中に突き刺さる。本作とバービーは何十年後に時代の分岐点として語られることだろう。この2つは表裏一体である。本作のマーク・ラファロとバービーのケン役ライアン・ゴズリングが仲良くダメ男代表としてアカデミー賞にノミネートされたことが楽しい。家父長制の終焉の後に咲いた花が今世界を支えている。

アカデミー賞取らなくとも永遠に語られるであろう傑作。是非「バービー」とセットで見よう。今、時代が求めてるものが詰まっている。
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