こたつムービー

哀れなるものたちのこたつムービーのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

【封切り一週目につきネタバレ保護つき】

力強い寓話。
R18指定という珍しいメジャー作品だが、観ればなるほど、という所だ。

これは文学してるなー、と見てたらエンドクレジットに原作があり逆にホッとした。それくらいブンガクしてる。
好みは当然あるがオリジナリティとしても「今」としても注目に値する成長メロソープドラマだ。

実際「フォレストガンプ」や「嫌われ松子」をふと思い出すくらい叙事的メロドラマだし、もっと言えば実は「舞踏会の手帖」からあるクラシックな題材であり寓話だ。ゆえに奇想天外だが「見易い」とも言える。始め30分位は目を慣らしつつ「この作品ってなにを描きたいの?」と見定める感じ。朧げに掴み出すとそれからは乗ってゆける。

リスボンには大航海時代を、ギリシャ(アレクサンドロス)ではシチズンと奴隷を、パリではムーランルージュや中国女を、ロンドンでは分かり易いマッチョな権威主義を。そんなヨーロッパ史も絡めながら、成長のカギとなる「男たち」を、成長に避けては通れない「通過儀礼(性の目覚めや知性の目覚め)」を、配置してゆく。むろん「有害な男らしさ」という世界的ワードがこの娯楽作の後押しをしていることも明らかだろう(だから「今」感満載)。

まあもちろん、
エマストーンすげーんだけどマヒするよな。

船上の老婦人マーサが特筆でやばかった。あと娼館の館主。つまり男のポートレートのみならず、しっかり女の肖像も対比させてみせる。
達観の至らなさ、美だけ追う至らなさ、プレイボーイの至らなさ、知的な優しさの至らなさ、科学的態度の至らなさ・・、あらゆるそれら「プアシングス」の寓話だ。そして人の成長には哀しいかな、ちょうどいい、がないのだ。人生にセーブポイントがないことを、この映画も語っている。

好みもある、と書いたが、オレ自体は面白いとは思うがココロには来なかった。だったらアジア人(仏陀方向)も出さんかいって思ったしキリスト教下の白人映画って感じはしたな。最後の方、モーレツにまとめ出すしな。(それと前世の旦那エピソード、いるか? ちと安くなったよ)

でもこれはつまり、ベラといっしょ。

「いつ」この映画に当たるか、ということ。
1巡目なら喰らう層も多いはず、と感じた。それだけの力強さと伝播性のある作品だ。