岩嵜修平

哀れなるものたちの岩嵜修平のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
素晴らしい!早くも、年間ベストに入るくらい好み。ヨルゴス・ランティモスらしく極めて変でグロテスクで下世話な映画なのに圧倒的にポップで美しい。ミシェル・ゴンドリー作品を待望する人間として、思わぬ方向からドンピシャな作品が。作中のエロやゴアが苦手でも楽しめる傑作。

昨今の、とある人物の自死からはじまる話に連なる物語ではあるが、フランケンシュタインなど数々の過去の世界を引用することで圧倒的にオリジナルな映画に。1人の女性の半生における陰と陽を一つの映画で描く、設定の絶妙さ。一概に誰が悪いと糾弾せず、是々非々、判断を観客に委ねるラストの見事さ!

アカデミー賞主演女優賞は激戦だと思うが、本作のエマ・ストーンが受賞を逃したら、 #Oscar の今後が厳しいのではないかと思うくらい1作品で何役もこなしている印象。でいて、全ての役がぶっ飛んでいる。ヌードやセックスシーンに関係なく、全てを出し切った演技を、他の俳優が嫉妬しない訳がない。

マーク・ラファロとウィレム・デフォーも、当て書きかと思うくらいピッタリ。名優2人だからこそ、何度も「死ねば良いのに」と思わされるし、「死なないで…」と思わされる。そして、今っぽい真面目ダメ男のマックス役のラミー・ユセフ(コメディアンとは意外!)と意外な役のマーガレット・クアリー!

ジャースキン・フェンドリックスによる音楽も好み過ぎる。シンプルなメロディながらフワ〜っと浮く感覚。生音を生かしつつ夢見心地にさせる音楽は、現実のフェミニズム的な問題を見据えながら必要なファンタジー性を塗していく本作に合っている。他の作品でも是非、劇伴を!

メアリー・シェリー(フランケンシュタインの生みの親)の話であり、その母・メアリー・ウルストンクラフト(フェミニズムの先駆者)と父・ウィリアム・ゴドウィン(アナキズムの先駆者)の話なのか…!
岩嵜修平

岩嵜修平