うっちー

哀れなるものたちのうっちーのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.8
初日に勢い込んで観に行ってしまったけどここ数年ぶりでもかなりベスト級に面白く、また挑戦的な作品だった! キモいしエロいのに絶妙な爽快感がある。また、その爽快感に無理くりさがなく、きっちり作り込まれてるのも素晴らしい。

見た目もフランケンシュタインのようなゴドウィン博士が作り出した人造美女、ベラの冒険&成長譚なのだけれど、その過程でさまざまな役割で出てくるキャラクターがよくできていて、浮ついたところがない。そもそも本来は創造者がフランケンみたいで作られた方は頭脳は赤ちゃんの美女という設定からしてユニークなのだ。

よちよち歩きのベラの急成長は目を見張るものがある。階級を知り、世界を知り、貧困を知り、場末を知り、さらに知的な向上心に加え、自身の成り立ちやその歪みを知り、その上でまたさらに大きな怒りを経て赦しの域にまでいたるベラを、エマ・ストーンはリアルに演じ切る。かなりの勇気がいるシーン連発で、彼女の気概を思い知らされる。

エマを利用しようとする弁護士を演じたマーク・ラファロもかなりギリギリまで恥ずかしい役回りだけど、嬉々として演じ切っていて上手い。また、船の上で出会ったインテリ老婦人と黒人青年のエピソードやエマがパリの娼館で出会った黒人の同僚との交流のくだりは清々しい。

また、なんといってもゴドウィン博士を演じたデフォーの重く温かい存在感! 忌野きわにベラとマックスに挟まれた姿は親子以外の何者でもなかった。

痛快かつ愛情に満ちた作品。文句なしです。
うっちー

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