エジャ丼

哀れなるものたちのエジャ丼のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.1
「ゼロから始まる“冒険”」

自ら命を絶ったベラという女性は、天才外科医ゴッドウィン・バクスターの手により蘇生。彼女のお腹の中にいた赤子の脳を移植したのだ。身体は大人だが、頭脳は産まれたてのベラは、世界を知る旅に出る。

支配=コントロールが物語の軸。知らないことだらけの世界、好奇心旺盛のベラはゴッドウィンの管理下から解放され、自身の成長に繋がることになる世界中への旅へ出かける。倫理やマナーも知らぬ彼女は、自制をきかせず、ダンカンとの欲を満たす行為に夢中になる。そのダンカンは自分の思うままに彼女を扱おうと支配を試みるが、ベラの純真さや素直さは彼の手をくぐり抜けていく。手懐けるつもりでいた女に、いつの間にか破滅させられた。手に負えない、掴みどころがない、なんなんだこの女は。

やがてベラは自立を遂げる。お金の稼ぎ方を身につけ、社会に対する考え方を持つようになる。様々な人と出会い、様々な価値観を知り、社会性や自分の在り方を定義し始める。知識や経験をもとに、自分自身をコントロールし、立派な一人の人間へと成熟していく。

一人の女性の冒険譚に留まらず、冒険、SF、ホラー、コメディと、様々な要素が組み合わさりできた世界観の中、衣装、セットに至るまで、壮大で美しい作品。哀れなるものたち、というジャンルと言っても過言ではない。

人は誰にも支配されるべくして存在しない。自ら選び、行動し、失敗し、成功し、悩み、驚き、感嘆し、全ての自分の選択が自分を自立させる。自分を制御できるのは、成熟した自分だけだ。