社会のダストダス

スペアキーの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

スペアキー(2022年製作の映画)
4.0
フランス映画っぽいフランス映画(当たり前ですが)

こういう特に何も起こらない映画好き。いや、住居侵入はいけないことなので、犯罪は起こってますけど。

フランス東部の町ナンシー、15歳のフィフィは問題ばかりの環境から抜け出したいと考えている。ある時、バカンスへ旅立つ友人ジャドの宅から市内の別荘のスペアキーをこっそり拝借。くつろいでいるとジャドの兄ステファンが戻ってきて鉢合わせ、しかしステファンはフィフィを追い出すことなく自由に出入りすることを許す。

コンビニで大量の煙草を注文しているシーンの意図が分からず、巻き戻してもう一度観てみたら、店員さんが振り返っている隙にポケットに入れていたのね。フィフィちゃんは町からほぼ出たことないって言ってるけど、地元でこんな盗みをしていたらすべてのお店でブラックリストに入ってそうだけど大丈夫か。

そんな手癖の悪いフィフィちゃん、久々に会ったちょっと裕福な友人宅から、別荘のカギをこれまた息を吸うようにパクってしまう。夏のあいだは帰ってこないはずだから、好き勝手出来るとリラックスしていたら、そこのお兄さんがパリから戻って来てエンカウントしラッキースケベが発生。

という最初の30分くらいを過ぎたら、あとは二人で封入作業の内職をしているという地味な絵面が続くけど、フィフィちゃんも根は良い子だし、ステファンも基本落ち着いた人格者なので、心配するような展開にはならず安心、微笑ましい。

15歳のフィフィちゃんは退屈な町での窮屈な暮らしにウンザリしているけど、家庭の中では比較的自立している面もある。恐らく二十歳過ぎのステファンは 久々に地元に戻って会った友人たちの変化について行けず寂しさを感じたりと、内面的には童心を懐かしんでいる節が見える。

フィフィちゃんは年上の男性に対する背伸びをした憧れで、ステファンの場合はフィフィちゃんが醸し出す青春の無敵感に惹かれたということ。これからステファンは本当の意味で大人になり、フィフィちゃんも今の自分が想像する大人の階段を上っていき、そこにギャップを感じるのかな。