Kachi

月のKachiのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.5
とてつもなく長く感じ、そして疲れた。

重度障害者を通して自分を見る。
虚構を通して現実を捉えるメディアー映画で「現実を見よ」と突きつけられる。

そんな作品だった。

私たちは、さと君が言うように「観たくないものに蓋をして、誰かにその責任をなすりつけている」のではないか?凄惨な事件の表面的な部分を見て、正義の味方をすることは簡単だ。けれど、「衝動的ではなく体力、持続力が必要で頑張らなくては」出来ないあの行為の実行に至った経緯を、この密度で見せられると言葉を失った。

洋子が書き上げた小説には何が描かれていたのか?洋子が書き上げた小説こそが、この辺見庸(よう)が書いた『月』という作品なのではないか?そんな、入子構造のような展開をふと想像して空恐ろしさを覚えた。

重度障害者を通じて自分自身を見つめる。経済合理性だけでなく、汚れ役を押し付けられた職員からしたら自分の生き方の根幹をも揺さぶられるような彼ら/彼女らの重い存在を背負いきれなかったのが「さと君」だった。では、私たちは果たしてその重荷に耐えられるかだろうか?とても簡単に返答出来ないと思ってしまった。
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