パピヨン

月のパピヨンのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.0
石井裕也監督は、「川の底からこんにちは」や「舟を編む」や「乱反射」が好きです。音楽の岩代太郎は近年、日本映画界でも益々実績を積み上げてますね。
原作は、相模原市の知的障害者施設で実際に起こった、元職員により19人もの患者が殺害された事件を小説にしたものですね。でも、この原作と本作品はかなり解離していると思います。小説では身動きできないキーちゃんの一人称視点で、サトくんを捉えて行きますし、その他の設定もあれこれ変えられています。でもそこは別物として自分は立派な映画だと思いました。
本作品の公開までには、プロデューサーと石井監督の、しれつな攻防戦が展開された様ですね。編集作業も終わり最後の音入れの段階で、KADOKAWAから製作中止の通告があったとか。「障害者を映画に出すな!」などの世間の批判の可能性や、演出をもっとソフトにせよとかあれこれ足を引っ張られた様ですね。結果スターサンズの単独配給での公開に漕ぎ着けたらしいです。
そんなこんなを掻い潜って出会うことができた本作品は、自分にとって確り記憶に残る2時間24分でした。磯村勇斗、二階堂ふみ、宮沢りえ、オダキリジョーはブラボーを贈ります。
先ずもって、火中の栗を拾う的な題材にトライしなければ、議論も表現のクオリティーも高まって行かない。かなりの日本映画のヒット作品は薄っぺらな当たり障りのないものばかりです。自分はその事を大事に思います。
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