マクマーフィ

ダム・マネー ウォール街を狙え!のマクマーフィのレビュー・感想・評価

3.8
持つ者と持たざる者…米国社会の分断をエンタメで描いた痛快作。

本作で描かれた一連の騒動はよく覚えている。当時、SNSが発端となって暴騰と暴落を繰り返すミーム株(=ゲームストップなど)は、とても危険な現象だと思っていた。大学生が投資アプリのロビンフットで無謀な取引をして自殺する事件も起きたのだ。

そんな手軽なギャンブルとしての株取引は今もオプション取引として急成長しているし、空売りを仕掛けるヘッジファンドの強欲ぶりは一般の個人投資家にとって本当に憎々しい。

で、それらはあくまで作品の背景であって、『ダム・マネー』が一級のエンターティンメントであることに何も影響しない。たとえば、ナタリー・ポートマンのキャリアハイ『ブラックスワン』はバレエの専門家から見たら大嘘だらけだそうだ。

本作のポール・ダノのハマり役だし、株取引を舞台とする弱者と強者の闘いが見事なアンサンブルと編集で描かれる。それは米国社会の分断を草の根的に表現したことでもある。さすが、『アイ、トーニャ』でキレキレの演出を見せたグレイグ・ギレスビー監督作の手腕である。