ジャン黒糖

Tuesday(原題)のジャン黒糖のレビュー・感想・評価

Tuesday(原題)(2015年製作の映画)
3.7
『aftersun/アフターサン』のシャーロット・ウェルズ監督、大学院時代の短編3作品がcharlotte-wells.comという、そのまま過ぎる彼女のサイトで無料観られる!
ということで観てみた。Filmarksには3作中『Tuesday』しか登録されていないので、ここでまとめて感想を書いておく。

日本語字幕はないものの、セリフも多くない短編なので全くわからん、という感じではなかった。

https://charlotte-wells.com/



『Tuesday』(2015年)
16歳のアリーは、家を出掛けようとするとき、母にどこに行くの?と呼び止められると、"It's Tuesday, so I'm going to go to dad's."と応える。

このセリフでこの物語の断片が見えてくる。
『aftersun』で描かれる物語のその後、という見方も出来る父と娘の、喪失後の話。

飲みかけのコップ、無造作なベットカバー、張り替えるギターの弦。
宿題を終えたアリーの表情、そしてお迎え。
直接説明がある訳ではないのに、数少ない描写で想像出来る。
彼女と、彼女の父に何があったのか。
わずか11分の短編ながら映像的な表現だけで想像させる余白があるし、『aftersun』に通じる作家性を感じる。



『Laps』(2017年)
6分弱の短編。
朝のルーティン。
プールで泳いだあとの朝の満員電車。

直接描かれる訳ではない。
でも、極端にクローズアップされた画面からは確かにわかる。
吊り革に捕まる彼女の腕に重なるもう一つの男性の腕、背中に重なる男性の胸、耳元でいまにも触れそうな男性の顔。
決定的な何かが起きる訳ではない。

でもこの主人公は痴漢されかねない状況に晒された。
この、声を挙げようにも挙げられない怖さ。
とてもリアルだった。



『Blue Christmas』(2017年)
在学中、卒業制作として作られた作品。
舞台は1968年、スコットランド。

精神的に乱れた妻と、それをストレスに感じている息子。
そしてそんな家族を持ち、借金取りを生業とする夫のとある1日。

夫目線で描かれるこの短編は、他2作に比べて物語性が1番強い。
けれど、妻がそうなった原因は描かれない。
朝、夫はそんな妻から逃げるように仕事に向かい、様々な家庭から借金を徴収しに行くが、帰ると妻の痛みを黙って受け入れる。

ラストは不思議な余韻が残るけれど、ウェルズ監督らしい痛みとの真摯な向き合い方が伝わる一本だった。
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