Bitdemonz

市子のBitdemonzのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
4.2
“人並みに生きる”ということが如何に様々なものに護られた上で成り立っているのか。過酷な椅子取りゲームは徐々にスピードを上げつつその椅子の数が減少する昨今、そこからこぼれ落ちた者が願う「あたりまえ」の椅子は、やはり何かを“奪う”事でしか座ることのできないものなのか。

サスペンスという体裁での導入は入りやすく、徐々に時系列を入れ替えながら、貧困とヤングケアラー、そして無戸籍という問題を取り扱いつつ、世の中の「あたりまえ」ゲームへの参加権すらハードルが高い人々にとっての現代の歪な“平等”が産んだやり場のなさと、純粋過ぎる「あたりまえ」への渇望や生物としての“正しさ”に、掴みどころのないモヤモヤとした余韻(悪い意味ではない)が残るエンディングまで引き込まれた。

冒頭で映し出されるシーン(プロポーズ)と同様のカットが結末付近で印象が違って見える構造とそのタイミングは、さも「あたりまえ」なものが「あたりまえではなかった」と明らかになるシンプルかつドラマチックな魅せ方にグッとくる。




オープニングとエンディングのシーンも同じで時系列的には1番最後のような気もしますが、読み取り方によっては“直前”だったりするなら、ひょっとすると(ニュースでは“身元不明の男女”という報道だったし)……なんて考えたりもしましたが、まぁ、どうなんでしょうか。

杉咲花は圧巻でした。
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