Bitdemonz

ボーはおそれているのBitdemonzのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.8
とてもじゃないが、こんな作品はオススメは出来ない。

「4回泣ける」のキャッチコピーなら“わざわざ”泣きたい人が観に行くんだろうが、「4回観てもワケわからん」と言われて誰が行くのか、そういう意味で万人に薦められたものではないという意味ですのであしからず。


大まかなストーリーラインは落ち着いた状態で考えれば割とスマートな(異常ではある)内容だが、全て主人公ボーの主観による“捉え方”や作品を支配している“暗喩”に満ちた構成で進行するため、不条理で整合性のない(ように見える)断片をより複雑化させ「なんだかよくわからない」非常に気持ちの悪い映画となっている。

何処からが現実で何処からボーの想像なのか(全部か?)は最早開始から解らず、解釈の仕方によっては全て事後からの回想(channel78の早送りで観た映像から察するに)かもしれないが、この母にしてこの息子あり、金持った母親の壮大な茶番に翻弄される極度の不安症な息子の精神が崩壊するまでのストーリーというシンプルな見立ても出来る。

もっともそれが全ての解答ではなく、巨大な存在による監視社会に支配された先行きの見えない“混沌”そのものである不条理な現代を生きる我々自身の人生を“丸ごと”歪な親子の物語に落とし込んだメタファーとも読み取れるし、神と人という宗教観も含めた壮大なものか、「映画」そのものをメタ的な視点で俯瞰しているのか、あるいは全て意味はないのか。



不安のイメージの具現化でグイグイ引っ張り恐怖が笑いに転換する一部、じっとりまとわりつく不気味さ(でもやっぱり笑った)で不安を煽る二部、掻き回された脳みそが思考を放棄しそうな状態で何処に連れていかれるのか唖然とする三部、何度も何度も“確信”が裏切られ(またか!?)挙句の果てには……な四部。

昨日みた夢を1から10まで全て覚えている事が出来たら、きっとこんなカンジなのかもしれないなと思いました。
なぜ朝になったら忘れてしまうのか、それは全部明確に覚えていたら気が狂っちゃうからかもしれません。

それを¥2000円払ってわざわざ体験しに行く!最高に贅沢な時間の無駄使い(上映時間179分)!

やれタイパだコスパだとせせこましくパフォーマンス重視される方にはとてもとてもオススメ出来ない、そんな“夢のある”映画に出会いました!アリがとう!アスター!

因みに劇中で登場する数々のオブジェクトが現物に近いサイズで幾つも添付されたパンフレットの出来栄えにはシビれました。
夢の続きを持ち帰れるなんてサイコーですね。
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