かすとり体力

市子のかすとり体力のレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
3.7
【本レビュー、本質的なネタバレは一切していないものの、作品終盤で分かる作品の「毛色」的なものに若干言及しているため、完全なゼロ情報で鑑賞したい方は、鑑賞後に読んでいたければと思います】

気になっていたらアマプラで配信開始。
(今月のアマプラ配信、過去になく熱過ぎる・・・。)

私、本作を「社会問題を絡めたミステリー・ヒューマン・ドラマ」として鑑賞していたため、本作ラストの「あまりの回収してなさ」に、当初怒りすら覚えたもの。

しかし、鑑賞後しばらく咀嚼していて気付いた。

これ、ヒューマン・ドラマとかじゃねぇ。。

一人のファム・ファタルの誕生譚を描いた、サイコ・スリラー作品だ。

元々作品自体は地に足が着いたしっかりとしたものであったので、上記の受け止めの変化によりラストに納得がいった結果、私の中での評価は急上昇した。

(受け止め一つで作品の評価が変わって来るって、映画(アート)ってほんと不思議ね。。)

作品の構成自体は、失踪した人物を捜索する過程で徐々にその人物の隠れていた姿が見えてきて、最終的には思いも寄らない真相に・・・という非常に既視感の強いもの。

その本作を輝かせているのは、これはもう皆が口を揃えて言うであろう、市子を演じた杉咲花の演技の凄まじさ。

基本的には何を考えているか分からないが、ときに感情の起伏が浮いては消え、ときに爆発するといった非常に複雑な人格設定であるにも関わらず、とても自然に、かつ凄まじい説得力で市子を体現していたように思う。

脇を固める俳優陣も皆上手く、非常に説得力のある生態系を描けている。
(特に森永悠希氏が演じた北君のヤダ味が最高・・・)

というのが作品自体の評価なんだけど、本作で描かれた「300日問題」、改めて調べると凄いな。

これ純粋に疑問なんだけど、民法上の親子関係を「血縁」で規定し続けることに、合理的な必然性があるんだろうか。
めちゃくちゃ前時代的だと思うんだけれど。

もちろん、何の基準もないとなんでもありになっちゃう、みたいなリスクはあるかと思うが、その基準が血縁に極度に偏っているのが疑問。
また、血縁を基準にするとしても、母親との血縁があるんだからそこで押さえは効いてるじゃん。非合理。

本作のジャンル的にそこのテーマを強く訴えたいような作品ではない気もするが、やはり我々、一人の大人のとしてこういったことを認識し都度、「おかしいじゃん」って言っていくことが大切な気がする。

ということで、色々述べましたが、総評良かったです。
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