ルサチマ

ちょっと吐くねのルサチマのレビュー・感想・評価

ちょっと吐くね(2023年製作の映画)
3.5
短編とはいえトイレを中心舞台にして撮ろうとする意気込みと、アングルとモンタージュの選択は他の入選作と比べてもちゃんとしていて悪くなかった。現代的な悩みを抱えた女の子の会話を生むシチュエーションの設計は作劇的にもしっかりしてるのだが、男を後景に置いたままで終えない結末を描くべきだったように思う。ポリコレ的に男性側への配慮ということではなくて、この映画の行き着く先が極めて当事者主義的な方向へ向かってしまっているからこそ、主人公の元彼の批判的な眼差しを遠巻きに置いておくのではなく、今一度男の配慮なき言葉に回帰した方がより現実を複雑なものとして提示できたように感じる。もう一つ、演出的(というより脚本の段階?)な部分で気になるのは、ショッキングピンクについての、やや文学風のやりとりがどうも台詞として浮きすぎてるように感じたことだった。あえて現代の口語表現から浮かせてるのだとしても、俳優にこの言葉をポエティックに?もしくはやや過剰に力を込めて発話させすぎて、言葉から人物が立ち現れるでもなければ、外側の世界に開くような音にも聞こえなかったのが勿体なく感じた。
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