針

アイアンクローの針のレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.1
元プロレスラーかつ鬼トレーナーの父親の元で生まれ育ったレスラー兄弟の栄光と苦悩の物語。実話を元にした映画で、かなりよかったです。

自分はプロレスにはそこまで思い入れはないけど全然大丈夫でした。「あれは一見八百長に見えなくもないけどみんな本気でやってて、最後は総合的な実力によって勝敗が決まる!」っつうことを知っていれば問題なし!

スポーツ映画としては、個人としての競技者ではなく、家族ドラマという形で血縁関係から生じる独特の葛藤を色濃く描いているところが面白いです。前半はそれでも和気藹々たる楽しい家族もの兼成長譚として進んでいくけど、当然いいことばかりじゃなくて、後半からの静かな畳みかけがなんとも印象的……。
理想主義者で熱血漢の父親を中心にしたこの家族、もちろん特別な結びつきゆえにいいところもあるのですが、実はそれは期待と緊張感によって結ばれた絆でもある。本当にいちばん大切なことは話し合わず共有もしないみたいな部分もあったりして、それらが長い目で見てこの家族にどういう影を落としていくのか……。

映像的にはなんと言っても試合のシーンの臨場感! 視界を狭められた不安定なカメラワークにぐいぐい引き込まれました。このへんはボクシングものを筆頭としたさまざまな映像技術の歴史的な積み重ねから来るものもあるのかなと。
それと、どのパートをみっちり描いてどこをサラッと省略するかみたいなリズムもよくて、いい感じに単調さを回避してる感じがする。

これが実話に基づいているというのが、一家に降りかかる驚くほどの”呪い”のリアリティを下支えしているような気がしてそれもいいかなと。
総じて完成度の高い一作ではないかと思いました。

あとはコメントで。
針