針

小さな悪の華の針のレビュー・感想・評価

小さな悪の華(1970年製作の映画)
3.0
キリスト教系の寄宿学校に通うアンヌとロールというふたりの少女が主人公。「姦淫するなかれ」というキリスト教の”欺瞞”の教えに反発したふたりは、性的だったり残酷だったりするイタズラをどんどん加速させていき……。

うーん、自分はちょっとこれはきびしかったです。同じ実在の事件をモデルにした『乙女の祈り』(監督ピーター・ジャクソン)を観てたので、どういう方向性の作品なのか事前に知ってたのもあるだろうけど、尺に対してストーリーの密度がやや物足りなく感じてしまいました。サタニスティックで怪しい絵面をもっと楽しめればよかったのですが……。

あとはアンヌとロールの振る舞いの残酷さと不愉快さですね。
いわゆるアンファン=テリブルものというか、思春期ゆえの子どもの残酷さを描いた映画のひとつだと思うんだけど、この方面の作品が自分はわりと苦手……。自分自身がもっと若かったころ=10代のときはわりと興味があったし、今も主人公たちの気持ちを理解できなくはないんだけど、どうしても「子どもゆえの」って部分を特別視ないしは神聖視してる感じがしてしまって、実際にはフィクションで描かれるほど魅力的でも蠱惑的でもないのでは、という気はしてしまう。
この映画のふたりも、見ていて非常に不愉快な悪ガキで、ひとりじゃなくてふたりだからこそ何でもやってしまうという感じはあるのですが、特にふたりでコソコソ語り合っては笑ってる感じとかはなかなか楽しみがたかった……。
ただし逆に発見もあって、この手の「恐るべき子供たち」的なお話は、見てるこちらが不快になるぐらいがむしろ本領を発揮できる正しい形なのかもなーと。それにふたりの主人公の嫌さも、この年代の少女(&少年も?)の誰もが持っている嫌さとしてわりと解像度が高い気はする。

中盤でふたりがからかいの対象にしているのがちょっと頭の弱い男であるというのが象徴的で、どんだけ酷い振る舞いをしても所詮は幼い子供の遊びにすぎないという。その枠を越えてしまったふたりがどうすればいいのか分からなくなる件りや、アンヌが自らの残酷さをもてあまして苦しむシーンなどはよかったです。教会での聖体拝領でもらった聖餅をこっそり吐き出し、ふたりでいっぱい集めてるところとかは楽しい。それとふたりが詩を朗読するシーンは、詩の内容がすごくいいのもあって自分は一番心惹かれたシーンでした(ラフォルグとボードレールの詩だそうです)。

ただやっぱり、幼いふたりの姿態を完全に性的なものとして嘗めまわすように撮っていく映像が非常に直視しづらかったですね……。牛のシーンとかはさすがにそこまで見せんでええわと思ってしまったし……。
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