針

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章の針のレビュー・感想・評価

3.8
浅野いにおの同名漫画の映画化。全二部作の前章。原作は未読。
突如東京に現れた巨大UFOが空に居座り始めてから早3年。女子高生の小山門出(声:幾田りら)と中川凰蘭(通称おんたん、声:あの)はそんな東京でちょっとイタめな普通の高校生活を送っていたが、次第に状況が進展し始めてしまい……。

内容は百合っぽさもありセカイ系っぽさもある、中二病思春期SFとでも言えばいいでしょうか。おんたんに代表される主人公たちのしょうもない日常と、UFOが常時存在しているシリアスな状況とのギャップから、この時期特有の切実さのようなものがにじみ出ていて、いい具合に観やすい感じ。
3・11の原発事故後の空気感とか、いろんな憶測が飛び交う現代のネット環境のう~んな感じなど、門出たちを取り巻く微妙な閉塞感は自分もけっこう分かるなーと……。

あとは『ドラえもん』オマージュを始めとして、いろんなSFっぽい要素がガチャガチャ合体した感じもあります。都市上空にUFOが居座るという設定は、映画なら『第9地区』、小説なら『幼年期の終わり』とかを思い出しましたが、この作品のちょっとイタめで楽しい青春との合体技は浅野いにおならではなのかなーと。

特に後半の展開が面白くて、最終的にどういうタイプのSFとして着地するのかはっきりしてないこともあり、『後章』がとても楽しみです。このふたりはどうなっちゃうんだろう……。

○その他
・自衛隊の戦車兵がプレステみたいなコントローラーでミサイルを操作してるとことか、妙にヌけた演出もいい感じ。
・自分は男なのですが、女子高生も男子といっしょで種類は違くてもおおむね同じ感じでアホな日常を送ってるのかなーと思うとちょっと楽しかったり(実際のところ解像度はどうなんかな)。
・UFOの上に雪が降り積もってる絵面が自分は好きでした。このへんちょっと『パト2』っぽかったり。
・おんたん役のあのちゃんの声は、正直最初は違和感があったのですが、むしろこのキャラクターにはすんごい合ってるなーと感じてからは逆にいいなと思いました。幾田りらも○。
・強いて言えば、劇場公開アニメとしてはそこまで映像の圧の強いタイプの作品ではないかなーとは正直。でも自分的にはストーリー&アイデアが面白そうなのでこれはこれでいいかなと。5月が楽しみです。
針