みじんコ

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章のみじんコのレビュー・感想・評価

4.0
原作の単行本を全巻持っている程度のファンとして、今回のアニメ映画化に関しては「原作漫画にはない、アニメならではの面白さがあったか」が最大の関心事でした。

本職のアニメ声優を使わずに、ミュージシャン2人を主役に起用したキャスティングは、特におんたん役のあのさんの声が奇跡的にキャラにマッチしてとても良かったと思います。「はにゃにゃフワ~~~ッ」があんなに自然に決まる人がいるとは驚きです。

脚本に関しては、12巻ある原作をどう圧縮するのかに注目していましたが、一種の群像劇だった原作を門出とおんたんの2人を中心にブラッシュアップし、原作エピソードをシャッフルして前篇後半に「衝撃の展開」を持って来た脚色は、後編に向けてのフックを作る為の上手いアレンジだと思いました。

映像面に関しては、原作からアニメへの落とし込みがかなり忠実にされていて、舞台である東京の空気感がリアルに表現されていたと思います。反面、独特なキャラデザインもそのまま落とし込まれており、リアルな世界観と戯画化されたキャラデザインのミスマッチ感が、良くも悪くも独特な味わいを出していたと思います。

個人的に不満だったのは、ラストのカタストロフィシーンが原作に忠実に作られるのではなく、もっと映画独特のアレンジがあった方が良かったと思いました。あのシーンは漫画では見開きいっぱいに広がるダイナミズムが発揮された名場面でしたが、映画の映像として観ると妙にこじんまりとして、観る者を圧倒するショックシーンとして成立していなかったと思います。もっと凄まじい地獄絵図を見せて欲しかったです。

原作が描かれた当時、東京上空に鎮座し続ける宇宙船は、「もしも東京に原発があったら?」というポスト311以降の日本人に対する問いかけであり、『シン・ゴジラ』と同じ時代の空気感で書かれた作品という感がありました。しかし、ネットの情報に踊らされ、排外主義に傾倒するキャラクターの姿を見て、原作連載当時よりも2024年の今の方が「クソやべぇ!」じゃん、期せずしてとっても今日的な作品になってしまったと感じました。

とりあえず5月公開の『後編』が楽しみです!
みじんコ

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