控え目に言って新海誠の最高傑作だったと思います。
まず、従来の新海作品に付き物だった、しみったれたナルシシズムを克服した、痛快なラストには素直に感動しました！
個人的には新海作品って男女間の恋愛描写がすごく記号的で 『君の名は 』に関しても主人公の2人がなぜお互いを好き合う事になったのか具体的な描写が無いまま、いつの間にかに『運命の2人』みたいになってて『？』っとなったまま、その後の展開がまったく共感できないままに終わったのに対して『天気の子 』では都会の片隅で寄る場所の無い2人が肩寄合う間に、互いを求め合うようになる描写が丹念に描かれていて、新海監督の作家としての進歩を感じました。
物語展開的にも『抗えない世界の仕組みに翻弄され、引き裂かれてゆく主人公達が、それに抵抗するも結局は受け入れざるを無く、失った愛をナルシスティックに回想する…みたいな展開がいままでの新海作品には多かった印象ですが『天気の子』に関しては『他人の迷惑とか関係無い、君たちは自分達が生き残るために、世界を壊したってかまわないんだ！』と言う力強いメッセージが込められており、生きるに余りにも厳しく苦しくなってしまった日本の社会をこれからサバイバルしなくてはならない若者達への向けてエールを監督が発しているのだと感じました。
『巫女』として大人達にその身を搾取され続けて遂にはその身を消滅させてしまった凪の事を帆高が大人に対して『(自分達の犠牲について)何も知らないくせに！』と、なじる場面にも『今の若い連中は…』と言いがちなオッサンとしてハッとさせられました。
今まではフィクションと自分語りの人だった新海監督が、社会と向き合い、若者に対して激励のメッセージを送る作品を作り上げた事に『今の時代性』と作家としての成長を感じた『天気の子』でした。
最後に『天気の子 』の前に『青春ブタ野郎』の予告が流れた時、なぜか京アニ放火事件の事がフラッシュバックして気持ちが急激に落ちこんで、映画を楽しめる気分でなくなったのですが、『天気の子』本編が始まったら、いつの間にかに物語に引き込まれ、事件の事とか忘れて、映画の世界に入り込んで興奮していました、そして最後には感動と元気をもらえました。
フィクションの力、アニメ癒しって素晴らしいですね…今回この作品にそれを思い知らされました。
