耶馬英彦

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章の耶馬英彦のレビュー・感想・評価

4.0
 前半だからなのか、風呂敷を広げるだけ広げている感じだ。

 登場人物は二種類に分かれる。変わる人と変わらない人だ。ふたりの主人公は、出来事に影響されて成長していき、変わっていくが、それに対して、他の人たちはあまり変わらない。カドデの父親は思索人間で、おそらく悲観主義だろう。パターナリズムの母親は、いまどき「母親に向かって」などという言葉を使う。この母親は一生変わらない。いじめ少女から愛国少女に順調に進んでいく生徒会長。自意識過剰だが、客観的な価値観も持っているオンタンの兄。率直でニュートラルな価値観を持つ教師ワタラセ。

 人間は新しい力や道具を手に入れると、使わずにいられないものだ。リスクとリターンを計算して、善悪を推し量る。最終的に決めるのは、独善的な価値観だと言っていい。自動車を作る人は、事故の可能性も考えるが、最終的には人間の利便性を優先する。それはある種の独善である。世界がよくなるためには殺人も辞さないというのが究極の独善で、殺人が大量になったら、もはや戦争だ。ここでようやくタイトルの意味がおぼろげに分かる。そして石川時代のカドデを、オンタンがどのように制御してきたのか。

 石川時代と東京時代の関係や、卒業後の主人公たちの運命なども気になるが、どう考えても地球上の物体ではない母艦の、内部の時間経過と地球上の時間経過の違いも気になる。地球での3年が、母艦では3分かもしれない。

 そういったもろもろが、後半でどのように収束するのか、非常に楽しみだ。
耶馬英彦

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