Masato

ミシシッピー・バーニングのMasatoのレビュー・感想・評価

ミシシッピー・バーニング(1988年製作の映画)
4.5

アラン・パーカー監督が今もアメリカに根強く残る黒人差別問題に真っ向から切り込んだ社会派サスペンス・スリラー。実話。

黒人差別問題の教科書みたいな物語。当時のアメリカ南部の黒人差別の酷さを誰が見ても分かるようにエンタメマシマシで描いている。「差別する白人の本当の敵は貧乏だった」「生まれつきじゃない。幼い頃から差別を叩き込まれる」「見て見ぬふりは共犯と同義だ」。こんだけ分かりやすくないと学ばない大人が世界には多いのも事実で、だからこそこの明快さはシンプルに良かった。

人間はここまで残酷になれるのかと思うほどに異常すぎる白人至上主義のミシシッピーの片田舎。歯向かえば殺すなんて当たり前。治安を守る保安官すらKKKの一味で黒人への加害は野放しというか殺す側。司法も…とホラー映画同然のヤバい村に来ちゃったよ〜が現実にあったんだから凄いし、そのような描写をしてくれる。

正しい教育って本当に大事。毒された土地にいたらいつまでも毒されたままでしかない。たびたび映る純真な子どもたちの姿がいっそう強く思わせてくれる。私達が次の世代へ遺恨を残さないようにしないといけない。今もディズニー映画批判にみる差別問題って根本の色んな不満を叩きやすい「ポリコレ」で叩いてるので、昔も今も変わっていない。

FBIのバディが差別主義者の蔓延る完全アウェーな土地でいかに事件を解決し差別に立ち向かっていくかをスリリングに描いていくものとしても良くできていて、正義感に溢れて猪突猛進のウィレムデフォーと上手く立ち回って着々と糸口を見つけていくベテランのジーン・ハックマンのコンビが非常に面白いし、二人の掛け合いで社会性やドラマ性を出していくのが上手い。

また、悪いやつはとことん懲らしめてええんやろ?そろそろ本気だすよ?って言ってくるかのように、ヘイトを溜めまくる前半から打って変わって後半からのプロ集団FBIのマジギレ具合がナーメテーターくらいにヤバくて笑っちゃう。ここらへんの痛快さも現実離れしすぎないけど飛び抜けて面白い感じは見事。

一応批判すべきところもあって、FBIがヒーローみたいに描かれていること。ウィキペディアにも書かれていたけど、この頃のFBIはどちらかというと黒人差別は野放しで公民権運動を邪魔してたほうでクソだった。フーバー長官はキング牧師のスキャンダルばら撒いて運動を邪魔してたしね。それを抜きにすれば良い映画。

ウィレム・デフォーの青臭さは今だと斬新。ヤバい役しかやらないからね。ジーン・ハックマンの演技がとんでもなくうまくて声に出して感嘆した。一瞬の表情の変わり方とか、態度の切り替え方とか凄すぎる。さすが名俳優。フランシス・マクドーマンドは今からは想像できない美人キャラが似合う俳優。一瞬誰かわからなかったくらい。

ヨンドゥでおなじみのマイケル・ルーカーがクソ悪い奴で出てます。そしてちょい役でソウのジジイも…。
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