Masato

スライ:スタローンの物語のMasatoのレビュー・感想・評価

スライ:スタローンの物語(2023年製作の映画)
4.7

シルベスター・スタローンの人生をロッキー、ランボー、エクスペンダブルズの3大シリーズを軸として振り返っていくドキュメンタリー。

素晴らしかった。彼が映画の中で語るすべての言葉が嘘偽りのないことを証明していく映画。誰にも求められないなかで、自分が求められるように道を開拓していきアメリカンドリームを掴んでいったこと、それをまさに映画に反映させている。本作を見たあとにロッキーやランボーを見たら、その言葉のリアルさをより実感できる作品になっている。普通の人には真似できない類まれな才能を持っていることは確かだが、だからといって自分とは違うとも言えない努力家なリアルさも持ち合わせている彼の素晴らしさよ。

親からの愛を得られないことが本当にこんなに人生を変えてしまうのかということを考えさせられた。スタローンは大人になってもずっと親から嫉妬されていたこと、愛がなかったことを引きずっていた。それほどダメージが大きい。それが反動になってこの地位にいることは紛れもないが、だからその後も家族のことに苦悩し続ける。そんな父親でもやっぱり愛さずにはいられなかった、親子の切っても切れない縁の複雑さに涙がこぼれてしまった。

ロッキー1でのミッキーとの会話は父親への不満の吐露だったこと、ロッキー5で息子のセイジを出演させたのは、自分が父親みたいに息子のチャンスを捻り潰すようなことをしたくなかったことの表れだったというエピソードは凄かった。それでもまた自分も父親のように疎かにしてしまう

彼のヒーローは絶対に死ぬ姿を見せない、永遠に生き続けるというポリシーは本当に素晴らしいなと思った。それが幻想だと分かっていても、傷ついた心を知っているから見せない。映画は人の希望であり続ける。ロッキーがアメリカン・ニューシネマを終わらせたことがよく分かる。

彼のドキュメンタリーにおいての言葉の端々に表現者としての知性がバシバシ感じられて、本当に天性の芸術家、詩人だなと感じた。表現力が凄まじい。
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