岩嵜修平

ビニールハウスの岩嵜修平のレビュー・感想・評価

ビニールハウス(2022年製作の映画)
3.7
長編初監督にして恐ろしくシビア。なるほど、イ・チャンドン×アリ・アスターな、現実的で救いのない絶望的展開の連続。『パラサイト』より残酷な世界のリアルを観客にとって身近な視点で映している。28歳にして、脚本・演出・編集まで洗練されているイ・ソルヒ監督、恐るべき才能。

ベースにあるのは、片親での育児と未成年の犯罪、そして実母と仕事先での介護の問題。更には精神のケアの難しさや性的搾取まで描いているが、その全てが物語のための設定でなく、一本の現実につながるように配されている。そうなるべくして社会は作られており、主人公は諦めているかのようにも見える。

アリ・アスターは彼自身の過酷な半生が作品に投影されているようだが、全作品でファンタジー性も孕ませている一方で、イ・ソルヒの作品は終始、極めてリアルなのに掌の上で転がされる。イ・チャンドン作品のようには、創作として他人事にさせてくれない。いつかコメディをやりたいとのこと、楽しみ。
岩嵜修平

岩嵜修平