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アメリカン・フィクションのmaverickのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.3
2023年のアメリカ映画。原作はパーシヴァル・エヴェレットの2001年の小説『イレイジャー』。アフリカ系アメリカ人のコード・ジェファーソン監督による長編映画監督デビュー作であり、第96回アカデミー賞で脚色賞を受賞した。


アカデミー賞では5部門にノミネート。ユーモラスでありながら、本質の部分では重みを感じさせる上質な作品性。現代アメリカの黒人問題を新たな角度から描いた点が秀逸である。趣があり、感動に染み入る人間ドラマとしても良作だ。

黒人問題、そして多様性とは何か。その本質を問う話。黒人の小説家がふざけて書いた小説が大ヒット作になってしまう。それはいかにも白人ウケしそうな、こてこての黒人のイメージで描かれた内容。それを世間はこぞって賞賛する。「これこそ黒人の痛みを描いた作品だ」と。批評家も絶賛し、しまいには映画化の話まで舞い込んでくる。多様性を掲げるハリウッドの映画業界だが、そこへの皮肉も込められていて強烈だ。

主人公を演じたジェフリー・ライトは、本作でアカデミー賞の主演男優賞にノミネート。残念ながら受賞は逃したが、情感溢れる人物表現が見事だった。天才作家として祭り上げられ、戸惑う様をユーモラスに演じる。いかにも悪そうな黒人の言い回しを劇中で演じる場面は爆笑だった。作家ではあるものの、本人は普通の中年男性と変わらない。本作は黒人問題を描いた作品性ではあるが、一人の男が家族と向き合う話でもある。自分の問題と向き合うことで自身も本質に気付かされるわけで、その部分が本作の感動要素。ジェフリー・ライトの深みのある演技が大きな感動を与えてくれる。。ジェフリー・ライトといえば『007』シリーズのフェリックス・ライター役のイメージだったが、本作で印象も大きく変化。味わい深い良い役者だ。問題児である兄を演じたスターリング・K・ブラウンの演技もとても良かった。

白人の好む黒人描写と聞いて、なるほどなと思った。アジア人に対してもそうだよね。ハリウッドでは今でも変な日本の描写がされる。中国や韓国は分からないけど、当事者が見れば違和感なのかもしれないな。


アカデミー賞関連で興味の沸いての鑑賞だったが、期待値以上であった。黒人問題をユニークな切り口で描いてあって斬新。唸らせるような傑作だ。
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