真鍋新一

異人たちの真鍋新一のレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
3.1
『異人たちとの夏』をイギリスに翻案したことによる変化よりも、大林宣彦監督版における風間杜夫と名取裕子の話を男性どうしの恋愛という設定にしたことによる変化のほうが大きい。人と人との関わり合いが薄くなってしまったこの現代でマイノリティとして生きることの不安、寂しさ、そういったもののほうが要素として大きいため、もちろん死んだ両親と再会するというお話もメインではあるのだけれど、必ずしもそちらにだけ比重が置かれているということはない。かなり淡泊であっさりした映画。原題の「All of Us Strangers(ぼくらはみんな見知らぬ他人)」が示すように、日常的な、漠然と不安な気分をスクリーンを通じて共有しあう映画だということに気がつくのに時間がかかってしまい、後半になるまで乗り切れないところがあった。

だから、この映画の方向性はイギリスっぽいね、へぇ~ということではなく、日本でももちろん成立するものだし、世界共通の感情として受け止めたい。日本人のキャストでもぜひ観てみたいものだと思う。
真鍋新一

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