真鍋新一

東海遊侠伝の真鍋新一のレビュー・感想・評価

東海遊侠伝(1964年製作の映画)
2.6
タイトルを見て清水の次郎長の話かと思ったがまったく関係なかった。東京・深川を舞台にした着流しヤクザもののアキラ。無国籍アクションでも、昭和初期の東京が舞台でも、どこで生まれ育っても必ずジョーと因縁の対決をしてしまうアキラの世界線を楽しもうと思ったが、ちょっと真面目すぎる仕上がりに思った。

モダンでインチキな紳士という見たまんまな大泉滉のキャラクターはイカツイ和服の野郎どもがひしめく画面の中でとても良いアクセントになっていたが、それほど活かされてはおらず、それも残念。村田英雄に至っては、神社のお祭りで商いをするヤクザたちを取り締まる方向で動いているのだから、主人公のアキラ側からすると割と敵っぽい気がするのだが、主題歌も歌い、登場人物の立ち位置としても特別枠なので悪人として描くわけにいかず、終盤までずっと後ろのほうにどっしりと立ちながらしみじみした顔をしていて、いやいやお前はさぁと何度もツッコミたくなってしまった。ジョーのキャラクターもいつものようにふざけ散らすこともできず、いまひとつ弾けない。吉行和子とのやりとりはいい雰囲気だったけれど。

大坂志郎の末路が直前に観た『黒い傷あとのブルース』と絵面が同じすぎて笑ってしまった。「流しのサブ」という役で登場する北島三郎が、はるか昔の別人にも関わらず、2階の窓から若い女性たちに「キャー、サブちゃん!」と声をかけられていたのも面白かった。彼もまた、いつどこに生れ落ちてもサブちゃんにしかなれない運命なのである。
真鍋新一

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