真鍋新一

嫁さがし千両勝負の真鍋新一のレビュー・感想・評価

嫁さがし千両勝負(1960年製作の映画)
3.2
東千代之介のバカ正直田舎イケメン侍が江戸に来て、開始2分半で殺人を目撃。割と展開がベタで緊張感も興奮も特にないが、すぐに観終わる中編なので楽しく観られた。夜の場面など明らかにセットで深みもなにもあったものではないが、それでも最後のほうでは主人公のおバカなキャラクターと千代之介の実直な芝居が結びついて、思わず涙を誘う1場面があった。こういう軽い映画でも、ひとつこういう場面があると、それだけで忘れがたいものになるのでうれしい。

青山京子の女スリと桜町弘子の町娘のダブルヒロイン。どちらも大変魅力的。見事な啖呵を切って千代之介に刀を投げる青山京子、千代之介の袖のほころびを見つけてキャッキャッと笑う桜町弘子の表情が印象的。味方に近衛十四郎がいるので勝負にはまず勝負に負ける気がしないし、立ち回りは峰打ちで死者も最小限。こういうあっぱれな感じの時代劇は何度でも観たい。

見たこともない大金を前にして狼狽える杉狂児のベタすぎるリアクションが可笑しい。そして星十郎のキレキレの江戸弁。こういう映画をたくさん見ていると、きっとネイティブの江戸弁が身につくんじゃないか。最後のほうがずっと彼のセリフに合わせて口をパクパクさせていた。江戸弁をしゃべりたい。
真鍋新一

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