田島史也

アメリ デジタルリマスター版の田島史也のレビュー・感想・評価

3.5
ユーロスペースにて公開時の35mmフィルムで鑑賞。所々入るノイズが良い。あぁ、映画観てるなぁって感じる。20年以上前に上映されたものを、今観られたことが嬉しい。ほぼ私と同じ年齢のこの作品には、観る前からどこか愛着が湧いていた。

デリカテッセンやロストチルドレンに登場した要素や画作りを踏襲しつつ、ジャンピエールジュネの新たな境地を魅せた作品。性行為からリズムが生まれる一連の流れはデリカテッセンのそれだし、霧がかかったような描写はロストチルドレンのそれだし、暖色の色調や斜めの構図はジャンピエール独特のもの。

一方で、ダイアローグを主軸に据えたことが新しく、まさしくお伽噺のような感覚を与え、ジャンピエール独特のテンポを更に強めてくれた。モンマルトルのお洒落な雰囲気に、挑戦的なカッティングがアクセントとなり、現実の世界なのに非現実感のある不思議な雰囲気を醸し出す。それまでの作品では、舞台を非現実のものとして作り上げていたが、本作はあくまで現実世界であることが面白いところ。ジャンピエールの世界は現実にも描き出せるのだ、と示してくれた。それまで、彼の描く不思議の国には必ずと言っていいほど子供が登場したが、今作では登場しない。故に、ファンタジーというよりミステリアスな雰囲気になり、それが、世界観やストーリーと見事にマッチしていた。

何より主人公のアメリが魅力的。それに尽きる。アメリを眺め、ジャンピエールの世界に浸る映画。映画館で観られて良かったと改めて思う。あぁ、映画観たなぁと、改めて思う。


映像0.7,音声0.8,ストーリー0.5,俳優1,その他0.5
田島史也

田島史也