田島史也

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章の田島史也のレビュー・感想・評価

3.6
名作日本アニメの詰め合わせ

突如飛来した未確認飛行物体を巡り、社会が混迷を窮め、正義と陰謀が渦巻く中で、おんたん達の日常が繰り広げられる。

ある出来事がトリガーとなり、陰謀が膨張する。政府を信じるものと、ネットを信じるもの。どちらも何かを過信しているという点で同じようなものだが、その対立が決定的に深まることで、世論は混沌とする。コロナ禍にみられたそれに近しく、ふざけた世界だが妙なリアリティを感じられた。

そうして右翼と左翼に2分された社会は、まさしく第二次大戦時のそれであり、そんな社会に自分の居場所を見つけようと、人々は自己の思想を表明していく。故に、本作では鋭利な思想と、時に過剰な言葉の羅列が見られ、さながら『パプリカ』の所長の発言に類似するものであった。

物語世界は『エヴァ』とか『AKIRA』を思わせるものであり、極めつけは「イソべやん」という名のドラえもん。パロディによりネタ感を演出する割には、描きたい世界とかメッセージとかがハッキリしているイメージがあった。

世界観が繊細に描写されたからこそ、観客目線での日常と、物語世界における8.31以後の日常が交錯し、違和を生じさせることに成功している。

ただ正直、世界観自体は先にも述べたように従来の名作日本アニメを寄せ集めたようなもので、特に新しさを感じるものではなかった。その既視感を、堂々たるパロディによって正当化というか誤魔化している印象は拭えない。

おんたんのキャラが良い。あのちゃんハマってた。ikura先生も凄く自然な演技をされていて驚いた。

今回は前編だったから消化不良な部分も多くあったが、ぜひ後編も観たいなと思える作品ではあった。


映像0.8,音声0.8,ストーリー0.8,俳優0.9,その他0.3
田島史也

田島史也