田島史也

デューン 砂の惑星PART2の田島史也のレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
3.8
前作を大きく上回る佳作

正直、前作がそれほど面白くなかったから、今作も期待できないなと感じていたが、杞憂だったらしい。

前作の段階では、独自の世界観を披露するに留まり、初めましての単語が羅列される説明ベースの内容であった。言ってしまえば、そこにストーリーは無かったのである。誰かに対する共感も反感もない。ただ漠然と広がるやけに大きな世界観に呆気に取られて終わった。
しかし今作は、ポールとチャニを中心に、人物の心情と思惑が丁寧に描かれたから、前作よりも圧倒的にメロドラマ的であったし、それによりストーリーに正当性が生まれた。

ある程度の単語や独自のシステムは、前作により理解していたから、前作で感じた世界観自体に対する違和感もある程度解消されたように思う。「砂歩き」とか「砂虫」とか、前作では何の前置きもなく提示されてしまったから拒絶したが、今作ではそれらもある程度フォーカスされ、観客が振り落とされない工夫がなされていた。

まだ疑問なのは、未来のテクノロジーを持ちながらにして、なぜ重要な場面で決闘形式の決着を求めるのか。なぜ剣で戦うのか。というところだが、もうこれについては諦めてそういう世界なのだと理解する他ないのだろう。

さて、本作の魅力は言うまでもなく音である。IMAXで鑑賞したことも少なからず影響しているが、音作りによって比類なき映画体験を実現していたことは確かだ。砂虫や爆発のシーン、映画音楽。その全てが劇場を震わし、空間を包み込んだ。音が空気の振動となって伝わってくる感覚。まるでその世界に入り込んだような感覚。やはり没入感というのは、音のクオリティに左右されるのだろう。思うに、精緻で隙のないストーリーは観客に没入の機会を与えるが、音は物理的に没入させる働きがあるのだ。IMAXで観てよかった、とこれ程までに思わされたのは本作が初めてである。

映像も良かった。前回少しCGIに違和感を感じたが、今回は一切なかった。洗練されたなと感じる。音も映像も1級品。素晴らしい映画体験だと思う。

続きものだからクライマックスが弱くなってしまうのは仕方ないが、前作同様決闘で終わってしまったのがなんだかなぁという感じ。ただ、次作には期待ができる作品だった。


映像1,音声1,ストーリー0.5,俳優0.9,その他0.4
田島史也

田島史也