アンダーソンGK

華岡青洲の妻のアンダーソンGKのレビュー・感想・評価

華岡青洲の妻(1967年製作の映画)
4.2
初めて見る、増村保造作品。
高崎電気館で開催してた「若尾文子映画祭」の一本として鑑賞。

江戸末期、外科医者の家へ嫁いだ女性が、最初は憧れてた姑に対して、「家」における女社会の中で、次第に憎しみを募らせていく…物語。

常に互いの苦労を思いやり、美しい嫁・姑の関係のように一見感じられるが、あくまでも「家」の存続のために必要な、一つの駒に過ぎないような言動を姑は、時折り見せる。それを敏感に感じとる嫁。
露骨な意地悪やケンカなどはしないが、その「家」にあって、女性に与えられた役割・貢献度を通じて、嫁・姑の熾烈な権力闘争が始まる…。
その極限は、夫である華岡青洲の、麻酔薬開発の実験台として、互いに名乗りを上げる所において達する。

思った以上に、封建社会におけるジェンダーについて、現代的な視点からカウンターを浴びせる内容となっており、驚いた。
主人公が、死病に犯された義理の妹から「自分は嫁に行けない人生でよかった…。あなたたち嫁・姑のやり取りを見てたら…」と言わせる所に、この作品の主題が端的に表れていた。

克服出来ない病よりも、社会に潜む病理を描く、本作の痛烈な皮肉が光る。