アンダーソンGK

ラストレターのアンダーソンGKのレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
4.3
過去の代表作、Loveletterの姉妹篇のような作品。亡くなった姉になり変わり、高校時代の初恋の男性と文通をする妹やその娘たち、その手紙を介して蘇る、さまざまな想いを描く。

序盤は、メールやSNS全盛時代において文通を行う不自然さや、状況描写のリアリティに雑な印象を持ったが、徐々に各人物たちの想いが、残された手紙や文章によって詳らかとなり、それが交錯していく過程で、物語の真実味を獲得していく…。

Loveletterと同様に、手紙をきっかけに死者の知られざる想いに触れ、その故人の新しい人物像が立ち上がる言葉の持つ喚起力と、その人自身が亡くなってしまった喪失感を、同時に描いている。

Loveletterで主演の2人が、本作では人生の辛酸を舐めるカップルとして登場させる所に、この作家の成熟を見るような気がした。

過去作から20年以上経ち、その甘美な想い出に耽けるだけではない、実人生の鬱屈や悲しみの表出も、本作には加味されている。

ラストレターとなる「最後の手紙」も、すべての人にとっての青春時代へ思いを馳せる追憶と共に、未来の自分たちへ宛てた過去の言葉からの現実の応答という、非情さをも併せ持つ。