アンダーソンGK

ハッピー・オールド・イヤーのアンダーソンGKのレビュー・感想・評価

4.5
予告編やチラシなど、広告ではラブコメっぽい話なのかと思いきや、意外と哲学的な内容にハッとさせられる。

駆け出しデザイナーの主人公は、ゴチャゴチャした自宅をデザイン事務所に改装すべく「断捨離」を決意する。
何事にも無駄を嫌い合理的な行動をとってきた主人公にとって、不要なモノを捨てる事は何でもない事…であるハズだった。
ふとした折に友人の贈り物を無配慮に捨ててしまった事から、そのモノに潜むヒトの気持ちについて、考え始める…。
モノに宿る、思い出や感情を自覚した主人公は、その送り主に返すことを持って、モノを「処分」することに切り替えるようになる。

返却行為によって、モノに潜んでた感情を、贈り主にも呼び起こしてしまい、不必要に過去の傷を疼かせたり、停滞していた時間が再び進み始めたり、その予期せぬ反響を引き起こしてしまう…。

モノを通じて蘇る過去の人間関係が、主人公たちを襲い、捨てる/捨てられた者としての、後悔や裏切り、怒りに苛まれていく。

日本・アメリカに留まらず、世界的にブームを起こしている「断捨離」について、その内部に潜む、捨てることの残酷さ・暴力性についてフォーカスを当てた、非常に思索的な作品だった。