アンダーソンGK

主戦場のアンダーソンGKのレビュー・感想・評価

主戦場(2018年製作の映画)
3.8
日系アメリカ人の監督による、従軍慰安婦問題が実在したか/しなかったか、を様々な立場の識者のインタビューだけで、ほぼ全編を構成する。

双方の陣営からのインタビューが、ボリューム的に均等になるように配され、互いの意見を弁証法的に構成し、その事実関係を吟味・検証していく内容。

この問題は、日本/韓国の戦争問題とずっと捉えてきたが、この映画によって男性/女性の人権問題として捉えられるべきもの、という認識に改めさせられた。

当時の日本政府主導による、兵士のための売春組織として、強制的に作り上げられた従軍慰安婦は、主に植民地支配を受けていた朝鮮人によって構成され、その支配体制からの強制徴用(自主的に参加した人々もいたが)であったことが、ハッキリとしてくる。

解放後も、封建的・男尊女卑的な韓国社会にあって、その被害を訴えることが出来ずにいた女性たちが、80年代に起こった民主化の末にようやく被害の声を上げる事になる。

その問題が顕在化していく過程が、識者のインタビューによって明らかになっていく。右派の人たちは、先入観や部分的な資料を根拠に自説を論じるのに対して、左派は多くの文献や多様な視点を介して、問題点を抽出していく…。

戦前回帰の安倍政権や日本会議にまで言及し、この国の来し方行く末を占う、いまの日本で観られるべき、問題提起の作品。これぐらいの内容、テレビで放送出来ないものなのか?