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アタラント号の10000lyfhのレビュー・感想・評価

アタラント号(1934年製作の映画)
3.0
新婚の船長夫婦と他 2名の乗員の、船の上の日常とドラマ。初々しい新婚日記からテンション孕むドラマへ、そしてお互いの喪失感の描写へと、シンプルなストーリーだが、たゆたうように流れ進む中に詩的な魅力が宿る。詩的リアリズム初期の佳作で、本作の雰囲気は、特に 1930年代のルノワールに受け継がれたと感じる。妻の家出後に放心状態で仕事が手につかなくなる船長など、人物たちにあまり魅力はないが、ネコたちが可愛い。蓄音機のホーンに集まるとこ、映画史上ベスト級のネコシーン。チェッカーゲームにネコを放り投げるのは絶対ダメ、映画にとって残念な傷。撮影技術面では、「競泳選手ジャンタリス」で培われた水中撮影が、映画に深みを与えている。爆発的な破壊力の前作「操行ゼロ」を踏まえて観ると、拍子抜けするくらい落ち着いた普通の映画だが、言い換えれば、一つの節目の後の再出発、成長過程。結果的にヴィゴ の遺作となったが、この後に映画監督としてのピークが来るはずだったと思うと、早逝が惜しまれてならない
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