このレビューはネタバレを含みます
裕福な学生たちと交流するため出自を偽り隠れて水商売する女子大生と、5年前の事故で記憶と言語を喪失した大学清掃員兼牛乳配達員の中年男性が交際するも、男性の過去により悲劇へと展開。大学生たちの経済格差、それに起因するスクールカースト、出自の違いはもとよりコミュニケーション不全すら超えての恋愛、といった現代的なテーマに挑んだ意欲作だが、「それらを単に描写してみた」止まりな感は否めず、特に響かずじまい。また、後半で北朝鮮工作員が重要な役割を担うが、昔のヒーローもの漫画やアニメに出てくるような、カリカチュライズされたヴィランで、それまで丁寧に積み上げられたリアリティが完全崩壊。プロパガンダ性も感じられ、その内容をどう捉えるかは別にして、作品本来のテーマも混濁。メインテーマに焦点を合わせ、すっきりと描くべきだった作品だろう。レンズフレアによる夢見心地映像、橋の美しい(「サタデーナイトフィーバー」を想起)北九州市ロケはよかった。エンディングで J ポップやめて欲しい