岩嵜修平

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Here(2023年製作の映画)
3.6
ベルリン映画祭で注目されたバス・ドゥヴォス監督最新作。ベルギーという国ならではの自然な多言語観。全ての物事をホリゾンタルに扱いたいという監督の言う通り、都会のビル群や自然の中の苔コロニー、森が等価に映され、最初は誰が主人公かも分からない。偶々、選ばれたように人生を映す。

観ていて真っ先に頭を過ったのはケリー・ライカート作品。そして、杉田協士作品を思い浮かべつつ、カウリスマキ『枯れ葉』も想起した。静かに淡々と進んでいく話の中で、人ならざるものも映そうとしている。何も映ってないようにも思える長回しのカットを何回も重ねることで、主人公たちの背景を映す。

舞台となったベルギーは多民族・多言語国家で、主人公たちのような移民も多く、複雑な背景を持つ。過去に起きたテロを題材とした作品もある監督は、本作では、静かに、そして豊かに、複雑な背景を持ちながらも真摯に生きる人々を映し続ける。冒頭のビル群と終盤の苔群はスケールを変えて同じなのかも。
岩嵜修平

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