ゴト

恋恋風塵(れんれんふうじん)のゴトのレビュー・感想・評価

3.9
都会の風は冷たいなんてのは、ひと昔前の話で、今じゃ都市部も地方もそこまで大きな差はなくなっている様に思う。でも、環境が変わることで心境にも変化が生まれるのはいつの時代も同じだろう。

ワンとホンは幼なじみで、厳密には交際しているわけではないが、実際は親公認の限りなくプラトニックな恋愛関係にある。このまま結婚して、子供が産まれて、幸せな家庭を築いていく。口には出さずともそんなことを二人は思い描いていたのではないか。しかし、生活のため台北に働きに出たことで、ワンの心に小さな変化が生まれる。

恋愛は、一方が想い続けていたとしても上手くはいかない。ワンという少年の心の揺らぎが、憎らしいほど瑞々しく、またもどかしく描かれている。それは、思うようにいかない都会での暮らしに対して生じる焦りや苛立ちでもあり、また少年から大人へと成長するためのきっかけでもあるように思われる。

もしかしたら、都会での暮らしを経て、ようやくホンに対する想いを愛情と理解したのかもしれない。そして、理解した時に急に怖くなったのかもしれない。ホンのことは好き。でも、その感情をどこか受け入れられない自分。幼かったと言えば、そのとおりなんだろうけど、やはりこのすれ違いは悲しい。

自分自身、もっと素直になれたらと思うことが未だにあるけど、ワンの場合もそう。どうあっても、ホンに対する想いは変わらないのだから。そうしたら、違った未来があったかもしれない。愛を失った痛みが、少年を大きく成長させる、そんな青春映画。

それにしても、映画の中で描かれる台湾の素晴らしいこと。都会の雑多な感じも田舎ののどかな雰囲気もどっちもたまらない。リーピンビンの為せる業か。
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