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ゴールド・ボーイのRenのレビュー・感想・評価

ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)
4.5
面白かった。閉鎖的だけど広がりがあって、はじめましての若手俳優が中心にいるため邦画っぽくない手触りだなとはすぐ思ったけど、原作が中国と分かって納得した。『夜明けのすべて』の口コミバズに続いてほしい。

とは言いつつ、「夜明け」と全く異なりとても大味だし、台詞回しや演技にやや怪しい点もあるので大衆評価は賛否が分かれそう。自分は賛側に立ちたい。最初から最後まで面白いものを観たという満足感を味わえるジュブナイルサスペンスエンタメ、これが邦画で年に数本観られれば上々だ。『さがす』の読後感、東野圭吾『流星の絆』などが好きな方に強く勧めたい。とても小説っぽい。それこそ東野圭吾のような、話の面白さで大衆人気を獲得した作家の香りを強烈に感じる。物語の止まらなさがいい。

義父母を事故に見せかけ崖から突き落とし殺害した男(岡田将生)。その現場を偶然捉えた、「父親」を発端としたトラブルの中で生きる3人の13歳(羽村仁成・星乃あんな・前出燿志)。4人の命運がカネで交錯する。
自己の利益を追求する2種類の支配欲がぶつかって地獄になるという話。ソシオパスのような感もある。トラブルの根幹である「父親」も、家庭の支配権の象徴。

「僕たちの問題ってさ、全部お金で解決しない?」。現代日本で、ここまで身も蓋もなく芯を食いまくったシンプルで素朴な問いは無い。カネを持っている人間は強く、ない人間は弱いという権力勾配がサスペンスを加速させていく。(架空の)一大派閥が経済を握り、国家権力すらそこにしがみつく様が根底にある物語の舞台に、日本であり/島として地理的に独立していて/米国統治(支配)の歴史と名残がある(轟音で空を飛ぶ米軍機...)沖縄を選ぶのも腑に落ちる。単純にロケーションが豊かで映像として見ていて面白いというメリットもある。

子どもは時に大人の想像を超えて残酷になれる、という話でもある。法で定義された子どもと、現実に存在する子どものギャップこそがサスペンスのスリルとして機能している。しかしやっぱりどんな子にも青春は存在し得るという最高のジュブナイルでもある。この辺りも東野圭吾や宮部みゆき、伊坂幸太郎、貴志祐介っぽいんだよな〜。

岡田将生は留まるところを知らない。『告白』に始まり、『悪人』『伊藤くん A to E』『ドライブ・マイ・カー』、そして今作と、邦画界の端正なクズを一手に引き受ける最高の性格俳優。超絶爽やかイケメンなのに「超絶爽やかイケメン」の役のイメージがない俳優第1位。胡散くさいかクズのどっちか。
そして商業映画はほぼ初の羽村仁成と星乃あんな。序盤は怪しいところもあったが、こなれてきた後半の演技はとてもよかった。序盤のぎこちなさも意味があったんだなぁと遡及的に納得できる。

エンタメ脚本としてご都合主義だったり、やりすぎだったりする点もあるが、その過剰さを面白さに繋げられているだけで優秀な邦画だと思う。中国でどのように受け入れられるのかが気になる。

その他、
○ 羽村仁成の普通っぽさと、大人と対峙した時の一筋縄ではいかない強かな雰囲気、とても良い。岡田将生としっかり対峙してた。
○ 星乃あんな、今後も俳優業を続けてくれたら山田杏奈のようになっていきそう。儚げで、幸薄い表情が似合う。
○ タイトル正式表記は『ゴールド・ボーイ』だけど、タイトルバックでは「黄金少年 GOLD BOY」と出すの面白い。
○ コーラの小道具もうちょっと頑張ってくれ〜。急にチープだったぞ〜。
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