矢吹

ゴースト・トロピックの矢吹のレビュー・感想・評価

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
4.1
よかった。

ベルギーブリュッセル。

時間を移す。
私の見ている景色と聞こえている音。
ここに他人が入る。
最も骨を折る仕事。語り手。

すごくいいシーンがあって、好きなね。
警察に伝えた後の、彼女の横顔、
なんか笑ってたら、めっちゃいい。
イタズラな笑顔に見えたから。
あとは、もちろん最後の、彼女の横顔、
若者の眼差し、さすがに青春すぎる時間、今だって楽しめてるからわからん、戻ってこないだろう、選択。きっと振り返る一点。
自分の人生が、他者を並走して、1つ構築される、了解するタイミング。
今もすでに未来から振り返りながら、過去も通り過ぎてゆく、あの景色。
意外と思い出すことってないけどさ、その時により大きな響きで受け取れることが一番大切じゃないですか。そんな瞬間を何個作れるかって競技でもあって、若さって。
どうとでもできる、あらゆる解放、またはそれ故の諸々に、満ちた表情で、たまらんかったっすね。
ここまできたら、俺はもう、若者の未来を願う親心でしか、見てないっすよ、この作品は特に。
それは、多分、君のお母さんのことを、俺が大好きだからでもあるんだよ。おかげさまでね。

場所の繋がり、一期一会、漂うカメラ。
不在で見せる存在。また朝になる日常。
見知らぬどこかへ。
人生は、この世に生きる人の数だけあるけれど、
世界は、どこかしこに遍在する。
無限ってこれのことか。
世界とは、水や火のように、何個混ざり合っても、大きな1つになるだけで。
消えることも生まれることもありますから。

静止画かと思った。寝過ごしのシーン。
めっちゃ怖くて、あの恐怖って何だろうな。
映画を観る側には、結局、何の自由も許されてなくて、所詮は、前掛け垂らした赤ん坊で、監督さんから差し出されるスプーンに対して、口を開けて待つことしかできない。みたいな。
そういう部分も、改めて、教え込まれたというか、でも全然これが、嫌じゃなかったんすよね。

最近見た映画の中で、なんか杉田協士さんの味を感じた。劇中、別に飯は食わねえけど。
詩人の目というか。カメラというか。
3羽減った鳥、取り壊される場所。
亜熱帯、トロピック?
大丈夫でしたって嘘つく、残高不足。
何気ないから、心が乗っかる画面の連続。

バスの乗り降り、女の子の座り方の悩み、店員さんの視線。お酒の告発。中に住んでいる人との秘密。

ずっと、とある夜に、彼女にカメラを向けさせていただいているだけで、全ての出来事には、説明があるんじゃなくて、むしろ、会話の中で、たまたま説明があるか、ないか、それだけで。
生きていても、それこそ散歩してる時とか、よくあるじゃん、なんかあったんだろうなって、前後の物語を想像するしかできない出来事。人とか物とか。
誰もいない時間の場所。場所の時間。
道を進むゆったりとしたバスのような視点。
街ゆく人たちにも、勝手にいろいろ思いを馳せさせられる。こうなってくるとまた、こちらの完敗。

優しい音楽に、ミッドナイトクルージング。
不思議な真夜中。
流石に、夜をぼやかして、光の玉だけで見せてくるのは、ズルいと僕はしますけど。
この映画のお陰様で、
いつものただの夜を、永遠に誤魔化せる可能性が出てきた。
いつものただの夜を、冒険にできるかもしれない好奇心を、出会えるかも知れない物語を増やしてくれる作品が、僕は好きというか、縋りたくてしょうがなくなる。くだらないけど、救ってやってくれ。お願いします。

今日は歩いて帰ろうかと思うけど、時間ないわ。
時間なんてずっとあってずっとないから、
存在するのは、人が数えて、初めて生まれる。
今は数えてしまいます。

『Here』への、入り口としてこれ以上ないくらい、ワクワクしてます。
鑑賞前です。はい。今から見ます。
15時5分の回。

Nele sys?さん?
エンドクレジット、めっちゃかっこよくて、よかったんだよな。

ちなみに、hereもめっちゃよかったです。
またあとで。
矢吹

矢吹