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マリア 怒りの娘のKOUSAKAのネタバレレビュー・内容・結末

マリア 怒りの娘(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ユーロスペース公開初日、ローラ・バウマイスター監督トークショー付き上映にて鑑賞。

ニカラグア映画を初めて見ましたが、それもそのはず。なんとニカラグアという国の歴史の中で長編映画はたった5本しか撮られていないそうです。この作品がその5本目に当たるわけですが、想像以上にハイレベルな傑作で本当に驚きました👏

かなり苛烈な生活環境の中、特に母と娘のやり取りにグッとくるシーンが多く、親子で一見じゃれ合って遊んでいるように見えて実はナイフを使って身を守る術を教えているシーンは、娘に対する深い愛を感じると同時に、幼い娘がたった一人で生きて行かざるを得なくなる日が刻一刻と近づいていることを悟っている母親の痛切な思いも感じられて、胸が苦しくなりました😣

昨今、良作や傑作と言われる作品では、ラストシーンで(大なり小なりの)希望や明るい未来を感じさせてくれることが多いです。今作でも、猫女(お母さん😭)に出会って大人への一歩を踏み出したマリアが、お母さんの言い付けどおりに(下を見ずに)前を向いて歩みを進めていくラストシーンには、きっと「希望や明るい未来」への願いが込められていると思いますが、今作ほどその「希望」が実現することが難しいのでは思わせる作品って意外と無いのではと思いました。

それくらいニカラグアという国の政情が非常に厳しいという認識を持ちましたし、そんな母国のネガティブな側面を勇気をもってストレートに描いているからこそだと思います。

監督もトークショーで、子供にとって明るい未来を実現させるには「(一部の権力者や組織が牛耳っている)富の再分配が必要である」と、絵空事とは真逆の「切実なリアリズム」を訴えていました。

そんな監督のことですから、この作品1本で全てが変わるわけではないことは百も承知。それでも少しずつでもいいから良い方向に変わっていくための第一歩として、この作品の輝きが色あせることはないでしょう。オープニングで、ゴミ山の中から一人ずつニョキ、ニョキっと頭を出して立ち上がる、あの子供たちの逞しい姿とともに😭
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