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テルマ&ルイーズ 4Kのfujisanのレビュー・感想・評価

テルマ&ルイーズ 4K(1991年製作の映画)
4.0
『たとえどうなろうと、この旅は最高よ』

テルマとルイーズ、女性二人のロードムービーであり、自由への逃避行。

1991年、リドリー・スコット監督の名作がカンヌでの記念上映のために監督監修のもとで4Kリマスター化され、日本でもリバイバル上映。すぐに観に行っていたものの、思い出補正が強すぎて評価が難しい映画でもありました。

節目ごとに何度も観ている映画ですが、本作は「ラ・ラ・ランド」と同じく終わり方に賛否がある映画で、自分の中でもこれで良かったのか悪かったのかがなかなか定まらない映画。

多くの方がご存知かと思いますが、あの印象的なエンディングに何を感じるのか。これもまた、観るたびに少しずつ変わる映画でもあります。

今回観て思ったのは、女性二人の行動が無計画で場当たり的な行動ではなく、不運が重なった結果だったというところ。そして、J.D(ブラッド・ピット)のせいで最悪な状況になったところからは、むしろ最後を理解したうえで行動しているんだな、ということが、表情や仕草から理解できました。

専業主婦でモラハラ夫にとらわれているテルマと、タバコの煙が充満するダイナーでたくましく働くウエイトレスのルイーズ。

テルマの服装は、序盤の男性受けする可愛らしい服装から徐々にワイルドなデニムになり、最後は日焼けも気にしない袖なしのサングラス姿。逆に、ルイーズは過去のトラウマから、旅が進むにつれて内に籠もるようになり、二人の立場が逆転していく面白さもありました。

ハーヴェイ・カイテル扮する刑事は彼女たちの理解者だったのに、という思いもずっとあったのですが、今回観るとこの終わり方がベストだったようにも思え、むしろ爽快感を感じるとともに、元気がもらえた気がしたのが不思議です。

テルマの、『私は何も後悔してない。本当の自分になれたのよ』っていう表情が悔しさではなく、本当の笑顔だったことが強く印象に残りました。


■ 映画について
まず、4Kリマスターされた映像が本当に美しく、鮮やかで驚きました。

また今回、「レザボア・ドッグス」のときと同じように再上映用のパンフレットも制作されていて、初回上映当時の思い出コラムがたくさん掲載されていたところも嬉しかったです。

またパンフで児玉美月さんが言及されていたように本作はゴリゴリの#MeToo映画でもあり、今でこそ「バービー」が普通に上映される時代になりましたが、30年以上前にこの内容が上映されていたのは凄いことですね。

本作はもともとリドリー・スコットが撮る予定は無かったそうですが、「最後の決闘裁判」や「ナポレオン」などに通じる、男に媚びない強い女性を描く監督が撮ったことも良かったのかもしれません。

そんな、監督と俳優、衣装と美術、脚本、全てが揃った奇跡のような映画を劇場で再び観ることが出来て幸せでした。

本当は色々思い出話もあるのですが、長くなるので省略。まとまりない内容になってる気がしますが、これにて。


■ 余談
岡田斗司夫氏によると、リドリー・スコット監督作品は、普通にエンタメとして面白い『白リドリー』作品と、ハッピーエンドにならず一見何が言いたいんだ?となる『黒リドリー』作品に分かれるそう。

『白リドリー』は「ブレードランナー」や「ノア」、「グラディエーター」など、『黒リドリー』は「悪の法則」や「最後の決闘裁判」、「ハウス・オブ・グッチ」などとのことで、言及のなかった本作は黒リドリーなのかなと思っていたのですが、今回観て、これは『白リドリー』だなって思えました。
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