晴れない空の降らない雨

空飛ぶゆうれい船の晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

空飛ぶゆうれい船(1969年製作の映画)
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 この頃から東映動画は長編の制作体制を2ラインにし、従来通りの本格長編をA作、もうひとつの60分程度で実写映画の前座扱いをB作とするようになった。これは最初のB作。石ノ森章太郎が原作だが、池田宏監督がほとんど自由にやったらしい。

 最初の10分くらいで紙芝居に耐えられなくなり、宮崎駿が担当した巨大ロボが市中で暴れるシーンまで飛ばした。なぜ幽霊船なのにSFチックな巨大ロボが出てくるのかは不明だが、ともあれ迫力あるシーンである。ビルも戦車も破壊しまくるのだが、その破片のアニメーションが凄いのなんの。破片作画に対する偏執は和製アニメの特徴となるが、その創始者は宮崎駿だとか。(でも、確か本作以前にも破片スゲーと思った作品があったのだが、どれだったかな。)

 巨大ロボと戦うために渋滞の中に自衛隊の戦車が現れ、市民お構いなしで進んでいくシーンがある。のちに『ルパン3世』2期の偽ルパンの話で反復されるシチュエーションである。あの勢いだと民間人が何人か潰されているように見え、自衛隊批判の意図が認められる。もっとも、本作のストーリー自体が軍拡をもくろむ政府の陰謀云々という社会派な内容であるため(もうちょっと深い話だが詳細は本編をご覧頂くとして)、全体から逸脱したシーンではない。今だったらウヨクの批判殺到で上映中止に追い込まれていそう(というか企画が通らないな)。
 劇中に出てくるジュースも、オマケグッズ商戦がエスカレートして肝心のジュースが捨てられるなんてことが社会問題化していた当時の世相への批判を込めたものらしい。